実務ができれば資格はいらない!が勘違いだったことに気づいた話

実務ができれば資格はいらない!は勘違いだったことに気づいた話

私は、Web業界10年目のディレクターです。
資格を持っていなくて不利益を被ることがなかったから、タイトルのようなことをずっと思っていました

そんな私が先日、仕事紹介サイトで規定変更があり、該当資格がなかったことでアカウントの制限を受けました。
理論上、制限解除は可能ですが、期限を考えると制限解除した後の活動はあまり現実的ではないので、実質的には締め出された形です。

制限解除のために色々動いた結果、自分の考え方を改めることができました。
似たような立場の人やこれからフリーになろうと思っている人がいたら、ちょっと読んでみてください

締め出されたのは、第二期中小企業デジタル化応援隊事業です。
先日、ニュースにもなっていたので名前はご存じの方も多いかもしれません。

目次

中小企業デジタル化応援隊とは?

第Ⅱ期デジタル化応援隊イメージ
https://digitalization-support.jp/

IT専門家の時給は高いです。

会社によって異なりますが、大体1時間4,000円~10,000円程度で計算されています。中小企業にとっては雇いたくても雇えないという問題があります。

そこを解決すべく、「国が時給を一部払うから、専門家の知見を借りてデジタル化(生産性の向上)を実現して欲しい」というシステムです。

デジタル化応援隊のしくみ
出典:デジタル化応援隊のしくみ

IT専門家は事務局が時給を補助(謝金)してくれるから、普段通りの単価でサービスを提供できますし、中小企業は実質的な負担が少なく専門家の知見を借りることができます

「とてもいいシステムだなー」と思って私も登録しました。

準委任契約なので、中小企業のスタッフの一員として動くことが可能なので、初期費用・月額費用、運用スキルや利活用についてなどの希望を聞いた上でツールを選定、登録の代行、ページや操作マニュアルなどのドキュメント作成など、かなり柔軟なサポートができました。

色々な企業さんへサポートが提供できるわと思っていたのですが、そうは問屋が卸さなかったようで、この事業は、令和3年9月16日(水)0頃よりおおよそ1ヶ月程度、停止されたのです。

なぜ凍結された?

「コーチ屋」、最近の言葉でいうなら「裏バイト」ってやつですかね。
自称IT専門家と自称中小企業が結託して、事務局からの謝金を吸い上げる不正行為があったようです。

一方、昨今、こういった補助金・助成金事業を不正に利用して利益を得る事案が発生しています。そして、本事業においても、不正を指南する活動が行われている旨の通報など、IT専門家が介在した不正の疑いのある事案が複数確認されておりこのような事案については捜査機関への届け出を行ったうえで、連携して厳正に対処していくこととします。

引用元:制度活用における不正防止厳格化のご案内

時系列でまとめるとこういった流れ

STEP
2021年6月29日

注意喚起:不正があるらしいから厳格に対処します

STEP
2021年9月15日

事業の一部停止:1ヶ月ほど新規登録や締結を停止

STEP
2021年10月19日

事業再開:IT専門家に条件追加

何があったのか詳しく分からないものの、モグラが多すぎてモグラ叩きができなくなったのかなと推測されます。

そして、IT専門家に追加された条件が「資格」でした。

個別に対応しよか→裏取りとかもしないといけないし無駄なタスクが多すぎる→よし、怪しい奴らを全員締め出そうという流れですかね。

参考リンク

・制度活用における不正防止厳格化のご案内 を追加しました。(6月29日)
https://digitalization-support.jp/documents/fraud_prevention.pdf

・事業の一時停止及び利用規約の改定について(9月15日)
https://digitalization-support.jp/documents/temporary_suspension.pdf

・事業再開のご案内(10月19日)
https://digitalization-support.jp/documents/reopening_announcement.pdf

IT専門家が厳格化

10/14に下記のようなメールが届いて、

第5条(IT専門家の登録条件)
(略)

IT専門家の範囲は、以下のいずれかの要件を満たし、中小企業のデジタル化を支援するものであることとします。
(1)本事業への参加を希望する個人で、以下のいずれかに該当する者であること。
本業・副業・兼業を問わないが、副業・兼業の場合は所属先から許可を得ている者であること。
(ア)中小企業支援法に基づく中小企業診断士
(イ)職業能力開発促進法に基づくウェブデザインの職種の技能検定の合格者
(ウ)情報処理の促進に関する法律に基づく情報処理安全確保支援士
(エ)情報処理の促進に関する法律に基づく情報処理技術者試験(システム監査技術者試験、ITサービスマネージャ試験、エンベデットシステムスペシャリスト試験、データベーススペシャリスト試験、ネットワークスペシャリスト試験、プロジェクトマネージャ試験、システムアーキテクト試験、ITストラテジスト試験、応用情報技術者試験、基本情報技術者試験、情報セキュリティマネジメント試験、ITパスポート試験等)の合格者
※試験制度発足から全ての試験を対象とする。
(オ)技術士法に基づく情報工学部門の技術士又は技術士補
(カ)ITコーディネータ
(2)第6条の規定により登録されたSMEサポーターに所属する者であること。なお、当該SMEサポーターが自社に所属する者をIT専門家として活動させる場合は、予め事務局が指定する様式に基づき、本事業に参画する認定情報処理機関として登録を行うものとします。
3~7.(略)

3~7が略になっているから、また再開されたら見ればいいだろうと思っていて、10/19にログインするとこんな画面に。

ロックされたIT専門家画面
本アカウントは事務局により機能が制限されています

提案などがロックされています。

ここで詳しく内容を読んで、事態に気づいたわけです。

資格試験は常に開催されているわけではありません。
色々調べた結果、パソコンで受ける試験形態(CBT)で随時やっているITパスポートなら大丈夫だろう。

月内に受ければ、翌月に官報に掲載(合格発表)されます。
長年Web業界にいるんだから大丈夫だろうと思って、19日にサイトを開き、24日の試験に申し込みました(猶予5日)。
試験を受けた翌日に試験結果レポートがダウンロードできます。

ITパスポートの結果レポート

5日でもやれるもんですね。

合格基準は満たしていますし、条件が追加されたのは、知見がない人を除外するためのものだと思っていたので、試験結果のレポートを登録してみたら、こういったメールが届きました。

お世話になっております。
第Ⅱ期中小企業デジタル化応援隊事務局でございます。
この度は利用規約改定に伴う追加書類のご提出を頂き誠にありがとうございます。
資格書類につきましてITパスポート試験結果レポートをご提出いただきましたが合格証書のご提出が必要です。
お手数をおかけしますが、本メール返信にてお送りください。

届いたメール

官報への掲載(合格発表)が翌月半ば(11/15)、合格証書の発送は翌々月半ば(12/14)です。
知見は示せたつもりですし、合格証書は12月だから手元にありません。

なんとかなりませんか?という連絡をしてみると

お世話になっております。
第Ⅱ期中小企業デジタル化応援隊事務局でございます。
この度は規約変更伴い、ご迷惑をお掛けしております。
追加書類(合格証)の提出期限は支援計画の締結ができる期限と同様で12/17となります。
大変心苦しいご案内となりますが、期日までにお手元に届きましたら本メール返信にてお送りください。
恐れ入りますが、何卒よろしくお願い申し上げます。

届いたメール

いい方が窓口になってくれているのが、せめてもの救いですね。

合格証書は12/14に発送されますから、最短でも12/15に手元に届きます。
最短で登録して、16日に承認されてロックが外れる。
17日に中小企業と支援計画を締結。

というフローはギリギリ可能ですが…(現実的じゃない)

支援を完了する期限が定められており、完了期限は2022年1月10日。

年末年始を挟むので、12/17に契約締結して、打ち合わせしたら「よいお年をー」で年越しへ、「あけましておめでとうございます」と挨拶したら事業期間が終わりそうなスケジュール感ですよね。

条件の詳細発表が10月で、合格証書の有無が必須要件なら、能力云々ではなくて「無資格者は出ていけ」ということと同義なんですよね。(マイルドにはなってますけどね)

デジタル化応援隊は第三期はある?

サポートセンターに聞いてみると、「現時点で第三期はないと聞いています」とのことでした。

そもそも、第二期は第一期で予定していた予算が使いきれず、持ち越しが発生したから始まったそうです。
第三期に持ち越せるほど予算は余っていないため、とりあえずは「デジタル化応援隊」は第二期で終了となるようです。

来年度も似たような支援制度は生まれるかもしれませんが、来年度の予算組みはまだ始まっていないので、あるかどうかも不明というのが現状です。

せっかく不正方法や対策も明確になったのですから、似たような支援をするのであれば、今回の教訓を活かして最初から不正するのが難しい制度にして欲しいですね。

制度自体はとてもいいものだと思います。

今回の厳格化で生じた考え方の変化

結果的に全部出ていけとなったのは、不正受給が確認できた案件のIT専門家が無資格者だったケースが大半だったのかもしれません。

私はしっかり支援させていただきましたが、支援を受けていない方や事務局から見れば、私も自称「IT専門家」として取り扱われたということです。

そして、「自称」IT専門家になってしまったのは、「実務ができるなら資格はいらない」という自分の怠惰な行動が原因です。
今回のケースだと「自称IT専門家と一緒にされたくない」のであれば、資格が必要だったということです。

「実務ができるなら資格はいらない」ではなく、
「実務ができるのだから、資格も取っておこう」に考え方が変化しました。

資格の勉強をしていると、「実務で1度も使ったことがない知識」や、「実務でがんがん使っているのに全く載ってない知識」などが出てきて、とても新鮮です。

とりあえずはIPA(情報処理推進機構)の段組みになっている資格を順番に取っていく予定です。
まずは12月に情報セキュリティマネジメント獲得を狙います。

12/19追記
先日、情報セキュリティマネジメント(SG)の試験受けてきました。
午前7割、午後が9割でスコアレポート上は合格です。
(合格基準は午前、午後6割以上。)
2022年は基本情報技術者(FE)、応用情報技術者(AP)、プロジェクトマネージャー(PM)へ取り組む予定です。

怪しいフリーランスからしっかりした外注業者へ

対外的にしっかりした業者と見られたいなら、それなりの準備とその証明となるものが必要です。
企業によってはプライバシーマークやISOを取得していないと、取引先の対象にならない場合もあるでしょう。
いわゆる足切りってやつです。

新卒採用の際に学歴フィルター、中途採用なら職務経歴や資格の有無でフィルターがかかるでしょう。
個人の資質などをいちいち見ていたら、時間がいくらあっても足りません。
フリーランスならこれまでの実績、ポートフォリオ、保有資格、コンテスト受賞歴、出版歴、メディア紹介実績などで客観的な実力を証明するしかありません。

最終的には成果物だったり、価格だったり、お客さんとの相性がモノを言ってきますが…。
最初のフィルターで弾かれる可能性が減るだけでも、かなりのプラスです。
実務には自信がありますからね。

これからフリーランスになろうとしているあなたへ

「実務ができれば資格はいらない」と思っている方は多いのではないでしょうか。

組織に所属している内は実務ができれば問題ないですが、組織から出ると「組織のかんばん」がなくなるので、他との違いやあなたにお願いする理由を客観的に示さないといけなくなります。

下記に挙げたような実績、集客のどれかにはっきりとYesと言えるなら大丈夫かと思いますが、もしYesがないなら在職中に準備を始めることを強くおすすめします。

実績について

  • 組織で携わったプロジェクトではなく「自分の」実績はありますか?
  • 他のフリーランスとの違いを客観的に示すことはできますか?
  • 資格、受賞歴、出版など、対外的な証明はありますか?

代理店さんからいただいたお仕事は「自分の実績」として発表することができません。大々的に発表できない実績は、実質的には意味がないです。面談の際に「内密に…」と使ってる方もいますが、機密保持の観点で考えると「漏らすんだ!?」と受け取られるかもしれません。

Webサイトへ掲載したり、販促資料などに堂々と使えない実績はないのと一緒です。

集客について

  • 発注してくれるクライアントはいますか?
  • その人からの受注量は十分食べていけるくらいの量ですか?
  • 自分のメディア(ブログ・SNSなど)での地盤はありますか?

起業した後に発注してくれるお客さんがいれば問題ありませんが、確約を得ておきましょう
〇〇会社の××さんは信頼しているものの、○○会社さんの総合力込みでの信頼でした。…なんてことはよくある話です。

ポートフォリオはデザインなどのパッと見で分かるものなら、どんどん作ってアップすればいいですが、ディレクションやコンサルティングなどのやってみないと分からないものは、事例紹介やお客様の声(推薦)の積み上げがポートフォリオになっていきます。

私はWebディレクターとして、カネなし、コネなし、資格なし、販路なしで独立したので、めちゃめちゃ苦労しました。(今から考えると、バカなことをしたなーと思います。)

デザインはポートフォリオを見れば想像がつきますし、バナー作成やイラストの一部をやってもらう「おためし」ができます。

しかし、ディレクションスキルは、実際に試してみないと分りません。さらに、ディレクターが使えないとプロジェクトそのものが崩壊しますから「おためし」はできません。クライアントの立場では冒険したくないですよね。

今になって考えれば「そりゃ頼まないわ」と納得できますが、当時の私は「スキルがあれば大丈夫」と真剣に思っていたのです。見たいものしか見てなかったのだと思います。

組織の方が小さな取り組みでも大きな成果が上がる

SEO施策で月1万セッションから10万セッションにするのはそれなりに大変です。しかし組織のサイトと個人サイトでは、組織のサイトの方がはるかに少ない労力で実現できます。

専門性や信頼性が段違いです。私は企業の支援をしながら自分でもコンテンツSEOに取り組んでいます。同じことをしてるのに、成果が出るまでのスピードやインパクトの大きさに違いを感じます。

自分のサイトの方が高度なことをしていても、成果は微々たるものだったりするんですよね…。

組織や企業がこれまでに積み上げてきた「重み」だったり「信頼」は伊達じゃないんですよね。

組織のサイトだと

  • 内部リンクを設置する
  • タイトルや見出しを整える

などの簡単な対策をしただけで、月の訪問数が2倍になったなんてこともあります。

本当にうらやま…もったいないと思います。

また、組織の方が使える予算も大きいです。人海戦術で短期間でランキングを上げる。ランディングページに広告で呼び込む。新商品ごとにLPを作成するなど、複数のプロジェクトを並行して走らせることも可能です。

まとめ:どちらに頼みますか?

  1. 実務ができない資格持ち
  2. 実務ができるが資格なし

自分の手術を大学病院の教授とブラックジャックのどちらに頼む?という2択なら、私はブラックジャックに頼みます。しかし、ブラックジャックの腕を知らない場合はどうでしょうか?

雑談ならこれでもいいかもしれません。しかし、仕事なら「実務ができる資格持ち」に頼みたいですし、それがいないならそもそも頼まないという選択もあります。

どんな条件でも対象外にならないように、候補の中で選んでもらえるように準備しないといけません。

実務を重視することは変わりません。客観的な裏付けを出せるように資格や実績を取得していこうと思います。

この一件から、国家試験には継続的に取り組んでいます。自分で言うのもなんですが、「極端な人間だなー」と思います。

最後になりましたが、デジタル化応援隊事務局様、現実に気づかせてくれてありがとうございました。
たぶん締め出してくれなかったら、勘違いしたままだったと思います

中小企業のデジタル化という理念に賛同しているため、お手伝いできないのは心苦しいですが、来年度似たような事業があるならば、来年度は資格を持った状態で参加させていただきます

なかったです。今後似たような事業があるかもしれないので、その時にはリベンジですね。

実務ができれば資格はいらない!は勘違いだったことに気づいた話

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