自社の商品・サービスがなぜ売れているのか(売れなかったのか)わかりますか?「ジョブ」は本質的な理由を教えてくれます。インバウンドマーケティングとの相性もぴったりなので、「ジョブ理論」を身に付けて自社の販売促進をレベルアップさせてしましましょう。
ジョブ理論とは
ハーバードビジネススクールのクレイトン・クリステンセン教授が提唱した議論です。商品はある特定の状況で成し遂げたい進歩(ジョブ)を果たすために雇用(消費)されるとして、なぜ商品が売れた(売れなかった)のかについて体系化した理論です。
チラシやLPを作る時は、「相手のベネフィット(得られる未来)」を考えてコピーやデザインを考えていたのですが、ベネフィットよりジョブ(役割)を考える方が本質を捉えています。
私はジョブ理論を読む前と読んだ後では、ものごとの捉え方が変わりました。
理論と聞くと「難しいのでは?」と構えてしまうかもしれませんが、題材になっている商品はミルクシェイクや野菜ジュースなどの身近な商品ですし、平易な表現で書かれていて非常に読みやすい良書だと思います。
読み終わったら目からウロコがどっさり落ちることでしょう。
ジョブ理論を活用すれば、
- 自社商品の本当の姿が見える
- 自社商品の本当のライバルが分かる
- 自社商品の本来の市場規模が分かる
- 自社商品を必要としている相手が分かる
- 自社商品の適切な広報戦略が分かる
こんなメリットがが手に入ります。いいことだらけ。
では、ジョブ理論とはどういったもので、どうやってジョブ理論をビジネスに活かしていくのか解説していきます。
仮説を立てる:なぜ自社の商品が売れているのか
まずは社内で仮説を立てましょう。自社なりの回答を持った状態で答えを知った方が、身になります。
マーケティング部署、営業、カスタマーサポートなどを集めて、「この商品はなぜ売れているのか?」についてのブレーンストーミングやミーティングをしてみましょう。
理由をポストイットに書いてまとめていきます。
機能、価格、デザインなど様々なアイデアが出るかと思います。
出てきたアイデアを5つの観点で仕分けすると、情報が管理しやすいです。
- 事実・特徴:基本情報、価格など
- 機能的価値:自社商品特有の物理的、機能的な効果
- 情緒的価値:使用することで特別な感情が生まれる(興奮する、リラックスできる、感動するなど)
- 自己表現価値:自分らしさや理想の自分を表現するサポートになる
- 社会的価値:周りから良い感情を抱かれる(社会的なステータス)
出てきたアイデアが少なかったり、細かく分けるのが面倒なら、1と2を機能的価値、3から5を情緒的価値として仕分けしましょう。
物理的な側面と感情的な側面で、商品の価値を分類して、自社が考える「売れる理由」(仮説)を立てておきます。
事実を確認する:なぜ自社の商品を買っているのか
まずはデータからの事実確認です。売れている時期、時間帯、購買層などに偏りがないかを見つけて、現場で確認しましょう。現場で確認しても傾向が見つからないのであれば、ユーザーに以下のような質問をしてみましょう。
- なぜ商品を購入したのか
- 商品を購入しない時は何で代替(代用)しているのか
- 商品を知るまではどうやって過ごしていたのか(無消費・代替品)
きっと、自社で出したアイデアにはなかったような理由が出てくることでしょう。
ミルクシェイクは「腹持ちのいい暇つぶし」、または「よい親であると思われたい」という理由で買われていました。
書籍の内容をすっ飛ばしているので、一見無関係に見えたり、意味が分からないかもしれません。
理由は購入までの経緯にあります。プロセスが分かれば、「美味しいから」「フレーバーが気に入っているから」といった機能的な理由ではなく、「なぜ、ミルクシェイクじゃないといけなかったのか?」という理由が分かります。
自社のライバル・自社商品の代替品を把握する
顧客にインタビューすることで、代替品の存在が判明します。
代替品を把握することで、自社の本当のライバル、本来の市場規模が見えてきます。
ミルクシェイクのライバルはアイスやスイーツではなく、バナナやベーグル、ドーナツといった「通勤の車内で試せる軽食」でした。
役割の再定義によって、市場規模は7倍に広がったとのことです。
再定義は「特定の状況下」まで絞り込んで考えることです。ミルクシェイクは平日の朝と休日の昼下がりでは求められる役割が異なりました。
平日の朝はひとりで使う「腹持ちのいい暇つぶし」、休日の昼下がりは子どもと一緒に来店して「よい親であると思われたい」というまったく異なるジョブを提供しているように、顧客が購入するシチュエーションや決定する際に一緒にいる相手、時間帯、場所などを考え、自社の商品が提供できる価値を定めましょう。
「ウチの商品は…」という思い込みで、自社の商品の可能性を狭めているかもしれません。
自社の役割を再定義する
自動車業界は自動車を提供するのではなく「モビリティ」(人の移動)を提供すると再定義されています。言葉遊びに聞こえるかもしれませんが、商品の定義を広げるとタクシーやバス、レンタカーなどのすべての移動手段が市場に変わります。
自社の戦場について見直した後に確認したいのは「他社・他手段との違い(自社が提供する価値)」です。ボルボは「安全」、スバルは「交通死亡事故ゼロ」を提供しようとしています。
自社が提供する価値は、「なぜウチじゃないといけないのか?」といった根源的な問いに基づいている必要があります。自社の社会的な役割(パーパス)を再定義してください。パーパスが浸透すれば、社員は使命感を持って仕事に取り組むことができますし、すべての顧客接点で一貫したメッセージを届けることができるようになります。
インテリアの会社ならば「空間デザイン」を提供していると言えるでしょうし、印刷会社なら「想いの具現化」を提供していると言えるのではないでしょうか。
コトウリはWebを中心とした販促・広報の内製化をサポートしています。売上アップや業務効率化といったことがご相談のきっかけですが、プロジェクトの成功を通じて「組織の活性化・自走化」を提供しています。
本来アプローチすべき相手を見つける
本来戦うべき市場と、提供できる価値が定まれば、ミルクシェイクように市場規模が7倍になる可能性があります。市場規模が7倍になるということは、これまでアプローチしていなかった(見落としていた)潜在客・見込み客が7倍見つかることになります。
1/7の世界で設定していたバイヤーペルソナ(理想の顧客像)や、彼ら彼女らとの顧客接点(タッチポイント)への見直しが必要になります。
新しい基準の中で「理想的な顧客は誰か?」について考えていきましょう。
バイヤーペルソナについては下記記事をご覧ください。
コミュニケーション戦略をデザインする
バイヤーペルソナが定まったら、彼ら彼女らが商品を知らずに過ごしているところから、顧客になるまでを可視化したカスタマージャーニーマップの作成ができます。
認識・検討・決定といったステージが転換する際に起こる重要なイベントは何なのか、自社にとって重要なメディアや、気合を入れて作るべきコンテンツを特定して優先順位を高く設定します。
CV(コンバージョン)を高めてから、認知拡大に乗り出しましょう。穴の空いたバケツで水を汲んでも疲れるだけです。
カスタマージャーニーマップについては下記記事をご覧ください。
まとめ:ジョブ理論を活用して自社のビジネスを発展させよう
ジョブ理論は5W1Hで言えばWhat(何を)提供するのか?に当たる部分です。
「この商品を提供しています。」ではなく、「あなたが成し遂げたい進歩を提供しています。」と言えるようになれば、市場規模も広がり、メッセージの打ち出し方も変わってきます。
潜在客・見込み客にとっても分かりやすいため、より多くの見込み客の心に響くマーケティング、営業ができるようになるでしょう。
あなたの商品が「なぜ売れているのか」について、より深く理解してみてはいかがでしょうか。