求人サイトや転職エージェントに頼んでやっと採用できたのに、短期間で辞めてしまった。
Webサイトに求職者向けのコンテンツを掲載すれば、こんなケースを減らすことができるのはご存じでしょうか?
転職サイトなどと併用しても効果が高まる求人向けのコンテンツマーケティングの始め方を解説します。
会社規模別の中途採用にかけた平均コスト
求人サイトに掲載したら4週間で20万~120万、スカウトから採用したら1人あたり100万オーバーと、採用にはお金がかかります。
マイナビ様の中途採用状況調査2021年版(2021年1月調査)によると、2020年の1年間で中途採用にかかった予算と実績は下記の通りです。
従業員数 | 予算 | 実績 |
---|---|---|
3名~50名 | 184.4万 | 162.7万 |
51名~300名 | 358.7万 | 322.4万 |
301名~1,000名 | 583.8万 | 535.5万 |
1,001名以上 | 1,887.7万 | 1,809.9万 |
せっかく採用できたのに、短期間で辞めてしまった。
予算が残ってないから追加の稟議を切らないといけない・・・なんてこともあり、人事担当は頭が痛いところです。
こういったケースを避けるには、応募者向けのコンテンツの作成が有効です。
あなたの会社には採用スペシャルサイトや、現在お持ちのホームページに求職者向けのコンテンツはありますか?
求職者向けの向けのコンテンツ
求人情報や募集要項はあるよという方は多いと思いますが、求職者が知りたいコンテンツを掲載している企業はまだまだ少ないように感じます。
例えば、こんなコンテンツありますか?
仕事の流れを説明したり、社員の顔を見せることで「その会社で働いている自分」をイメージしてもらうことができるようになります。
コンテンツを作っておけば、それを見て「役に立てそう」と思う方もいれば、「やってみたい」と思う方もいるでしょう。
求職者のモチベーションを高める効果がありますし、イメージしてもらえれば勘違いやミスマッチが減ります。
情報を求職者向けに加工しよう
「自社が何をしているか」などはサービス紹介などから読み取って欲しいのが人事や経営層の本音かもしれませんが、サービス紹介はお客さんに向けた情報なのであって、サービスを提供する側とは大きく異なります。
「自社のサービスを紹介する」ということは共通していますが、内向きの説明と外向きの説明では大きく変わりますよね。
内向きの情報を掲載することで「こんなはずじゃなかった」の比率が減りますから、採用後の定着率が大きく上がります。
社員紹介などで共通の趣味を持っている先輩がいたりすると、親近感を持ったりしますし、入社した後の話のきっかけにもなるので、会社になじみやすくなるといった効果もあります。
「職務内容」だと堅い印象を受けますが、「ウチの会社に入ったら、仕事を通してこんなことが身に付きますよ」と情報の打ち出し方を変えるだけで応募率を上げることができます。
「資格を取得したら給与アップ」「入社して〇年以内にこういった資格を取得しています」といった社員の成長を数字で見せるのもスキルアップを目指す求職者にとってのモチベーションになるでしょう。
本当に効くの?
求職者向けのコンテンツ作成は疑似的なOB訪問や疑似的なインターンシップです。
OB訪問やインターンシップが採用に効果的であることを思えば、コンテンツ作成は効果的であると言えるでしょう。
私の実体験(複数回)としても、転職活動をする中で転職サイトに求人が載っていたら、必ず企業のホームページを訪問しますし、社員インタビュー、一日の流れ、社員ブログといったコンテンツは必ず閲覧していました。
求人情報に掲載されている情報と社員の一日に載っている勤務時間の矛盾などを見つけて、応募するのを止めたこともありますw
応募件数の増加という点ではマイナスかもしれませんが、アンマッチが避けれたという意味ではプラスですね。
閲覧した上で応募してくれる求職者はある程度了承済みということなのですから。
少なくとも中途採用には効果的だと思います。
求人サイト、SNS、フリペーパーなど求職者が企業の募集を知るきっかけがどの媒体だったとしても、Webサイトにコンテンツを用意しておけば求人や採用の役に立ちます。
どういったコンテンツにするかは、定期的に更新するかしないかといった運用体制(方針)で作り方は変わってきます。
定期的に更新するなら社員ブログのような更新性の高い作りをすればいいでしょうし、定期的に更新しない(半年に1回程度)場合は社員インタビュー、社員紹介といったたまにメンテナンスすればいい作りにすればいいと思います。
どういったコンテンツを掲載すればいいの?
求職者が知りたいことは従業員が価値を感じる6つの要素のどれかです。
6つの内のどれかを中心に据えてコンテンツを作れば、求職者も興味を持って読んでくれる可能性が高まります。
従業員体験価値を構成する6つの要素
- 目的(Purpose)
- やりがい(Inspire)
- 社員の人柄(People)
- 職務(Work)
- 報酬(Total Rewards)
- 信頼関係(Trust)
1.目的(Purpose)
「何のためにこの会社で働くのか?」に対しての答えをコンテンツにします。
経営理念、ビジョン、トップメッセージなど呼び方はなんでもいいのですが、働く意義について発信するコンテンツを用意しましょう。
社会貢献性の高い仕事をしていると自覚してもらえれば、誇りが持てるようになります。
SDGsなどをテーマにするのもいいですね。
2.やりがい(Inspire)
「企業の価値が自分の成長にどう生きるのか?」に対しての答えをコンテンツにします。
自社にはこういった強みがあるから、あなたやあなたの大切な人にこういったプラスがありますということを伝えるコンテンツです。
サービス一覧や他との違いが該当するコンテンツですが、このままだと求職者には届きづらいので、コンテンツを加工して他人事から自分事になってもらえるようなコンテンツを作りましょう。
仕事中にあったちょっといいことなどをストーリーにすると届きやすいです。
(例:お客様からいただいたお手紙、感謝のお言葉など)
3.社員の人柄(People)
「どういう人と働いてどんな刺激が受けられるか?」に対しての答えをコンテンツにします。
家族よりも長い時間を過ごしているのですから、気になって当然ですよね。
社員紹介、社員インタビューなどで人柄が分かるようなコンテンツを作るか、社員ブログなどで文章から個人の人柄を感じさせるかです。
求職者向けなら前者のコンテンツでも十分かと思いますが、後者は社員のレベルアップにつながりますし、指名依頼がもらえることもあったりします。
4.職務(Work)
「どのような仕事を任されるのか、経験できるのか?」に対しての答えをコンテンツにします。
目的ややりがいに似てますが、もっと直接的にこういったスキルが身に付きますというようなメッセージの発信が効果的です。
入社当初のスキルと入社〇年目のスキルを比較できるようなコンテンツを作れば、より具体的なキャリアアップがイメージできるため、応募者が増えそうですね。(育った時に辞めないような訴求や制度も必要です。)
5.報酬(Total Rewards)
「待遇や評価体制はどういったもの?」に対しての答えをコンテンツにします。
給与や福利厚生(募集要項)などの基本的なものから、資格取得やセミナー参加の補助をしていることをアピールして、自己成長や自己実現をサポートしていることを伝えたり、社内イベント(ブログで発表)、ワークライフバランス(一日の流れ)などを掲載します。
テレワークに取り組んでいるかどうかなども待遇に入りますね。
福利厚生というわけではないのですが、ワークライフバランスに関わってきますし、リモートワークができるなら結婚や育児、介護といった家庭の事情でこれまでの雇用形態が維持できなかった方の活躍も可能になります。
テレワークに取り組んでいることを発信して、BtoBの中小企業(30名未満)が県内で有数の働きたい会社に選ばれた事例もあるくらいです。
テレワークが日本の中小企業を元気にする(PDF)| 総務省
6.信頼関係(Trust)
「経営陣と従業員間の相互信頼関係はどのくらい築けているか?」に対しての答えをコンテンツにします。
社員旅行などがあれば経営陣と従業員間の絡みを見せたり、ランチミーティングを実施している、チャットツールで気軽に連絡ができる、社内報や社内掲示板があるなどの実施している施策を公開すると距離感が掴めるでしょう。
正直に発信すると来てくれなくなるんじゃないの?
情報を開示した方が求職者は増えます。
なぜなら、開示することで検索クエリが生まれて、検索結果に表示される機会が増えるからです。
いい面だけを見せて入ってもらっても、すぐ辞めてしまうと色々な面でマイナスです。
求職者の職歴も汚れますし、転職のクチコミサイトへ悪評を書く人もいるでしょうから、会社の評判も落ちる可能性があります。
労務面で見れば保険や年金などの手続きが無駄になりますし、配属先の上長が教育に使った時間も無駄になります。
「どうせすぐ辞める」となってしまうと、教育にかける熱意がなくなって、「教えてくれない」「放置」などのマイナス感情が溜まります。
正直に発信した上で、来てくれた人の方が熱意がありますし、定着率も高くなります。
求人向けコンテンツのつくり方~準備する~
- 運用体制を決める
- 会社の魅力を洗い出す
- 社員にインタビューする
- 情報を整理する
1.運用体制を決める
まずは更新するかしないかを決めます。
更新するなら、中核になるスタッフが1週間に1日(8h)程度の時間を確保できるように配慮しましょう。
1ヶ月に1日程度が精一杯なら更新システムだけ導入しておいて、時間が確保できるようになったら取り組む。
定期的に時間を取るのが難しい場合は、更新しない前提のコンテンツを作ります。
2.会社の魅力を洗い出す
人事や各部署の中心メンバーでブレーンストーミングしましょう。
主観でもいいですし、他社に比べてどういった魅力があるかなどを書き出しましょう。
会議室でやるならばポストイットを配って書いていくのがおすすめです。
Googleスプレッドシートやマインドマップツールで一斉に更新してもいいと思います。
3.社員にインタビューする
「なぜこの会社に就職したのか?」「この会社のいいところは?」についての本音を集めます。
アイデアと照合すると、対外的に魅力と伝えている部分と求職者が就職する決め手にした部分が違ったり、認識していなかったけど在籍することで判明したいい部分などが分かります。
新卒・3年目・5年目・10年目といった在籍年数や、部署・役職別・経営層といった立場で区切ってインタビューするのがいいと思います。
新卒からずっと同じ会社にいる人と、中途採用だといい部分と感じるポイントも違えば、重視するポイントも違うので、多くの気づきを得ることができますよ。
4.情報を整理する
会社の魅力を従業員が価値を感じる6つの要素のどれに該当するかを分類します。
テーマ分けみたいなものです。
分類すると、どういったコンテンツを作ればいいのかが分かります。
退職者が出た時や半年~数年に1回程度のペースで更新するなら作ったコンテンツの削除や追加をすればいいです。
ここからは定期的に更新する際の手順です。
社員ブログで応募者を増やすことを目的でします。
求人向けコンテンツのつくり方~テストする~
- カテゴリを設計する
- 仮ルールを決める
- 数人でテストする
- ルールを見直す
5.カテゴリを設計する
求人用のメディアを作る場合はカテゴリ設計は必須です。
Webサイトに組み込む場合は、社員ブログというざっくりしたカテゴリにした上で、タグ付けで対応してもOKです。
カテゴリにしてもタグにしても、求職者が興味を持つテーマ、カテゴリ名にしましょう。
コンテンツテーマ | カテゴリ名 |
---|---|
目的 | お仕事紹介 |
やりがい | 求職者へのメッセージ |
社員の人柄 | 社員の日記(プライベート) |
職務 | 営業の一日の流れ(部署別) |
報酬 | スキルアップ |
信頼関係 | ランチミーティング、朝会 |
求職者向けのコンテンツなので、キーワードボリュームとかSEOといった小難しいことを考えなくてOKです。
独自性と読みやすさを意識して作りましょう。
従来のコンテンツマーケティングだと色々考えることが増えます。
参考 コンテンツマーケティングとは?どこよりも簡単に解説しました
6.仮のルールを決める
まずは、すべてのスタッフが著者になって書いていく当番制にするのか、特定のスタッフが中心になる編集部制にするのかを決めましょう。
当番制にするならばスタッフ全員に投稿の共通ルールなどを教育する機会を作りますし、特定のスタッフが編集するなら、コンテンツのタネを集めやすくするためのルールを作ることに注力していきます。
次に1ヶ月にいくつ投稿するのか、何文字くらいのコンテンツにするのか、画像は使うのかなどの概要になるルールを決めていきます。
最初は数人のメンバーが中心になって進めていくので、コンテンツのテーマ(6つの要素のどれかに該当する)を外さなければ、やりやすいように設定すればいいと思います。
7.数人でテストする
選抜されたメンバーは人事、マーケティング、管理などの文章を作るのが得意なスタッフかと思います。
まずは3ヶ月程度やってみて、投稿できた記事数とかかった時間を測定します。
時間が経つごとにスピードは上がってくると思いますが、全社に広げる場合は1ヶ月目の時間を参照してルールを作りましょう。
慣れてない人にもやってもらえるような環境を作ることが目的です。
編集部体制で記事を作成する場合は、どのくらい前に協力を依頼すればスムーズに流れるのかを探る期間になります。
中核メンバーは取り組む意味をしっかり理解しているものの、周りのスタッフは「通常業務に追加された」といった認識のことが多いです。
「なぜコンテンツマーケティングを実施するのか?」という理念を伝えつつ、成果が出たら社内報などでフィードバックをして理念の浸透に努めましょう。
8.ルールを見直す
チェックするポイントは
- 設定した目標が達成できたか
- 達成するにはどのくらいの時間が必要か
- どういったフォローがあれば達成しやすくなるか
- 何がネックになったか
- どういったルールにすればいいか
です。
無理があると続かないので、ギリギリを攻めるよりもどうすれば通常業務になるか、自然な流れでコンテンツが貯めることができるようになるかを考えましょう。
ここからは全社に広げる方法です。
求人向けコンテンツのつくり方~全社に広げる~
- 構成案をつくる
- ルールを決める
- 環境をつくる
- 当番を決める
- 効果を測定する
- 定期的に見直しをする
9.構成案をつくる
構成案は記事の全体像が把握できる設計図です。
料理でいうレシピ、小説でいうプロット、映像作品の絵コンテのようなものです。
文章を書くのが苦手な人が悩まなくていいように穴埋めや質問形式にしたり、テーマごとにひな形を作っておくとスピードが上がります。
関連記事 会社のブログがすらすら書けてみんなにモテる構成案のつくりかた
10.ルールを決める
- 当番制にするのか、編集部制にするのか
- 1ヶ月にいくつ投稿するのか
- 何文字くらいの記事にするのか
- 表記ゆれ対策の記述ルールやマニュアルなど
- 記事のテーマ(自由よりもいくつかの候補から選ぶ方が楽です)
社内用および求職者向けのコンテンツなので、かなりゆるいルールです。
数人のメンバーで作ったルールを元にしているので、人数が増えたらまたルールが合わない部分が出てくるので、吸い上げる仕組みを作っておきましょう。
11.環境をつくる
- 困ったことや改善案を吸い上げる仕組みを作っておく
- フォロー体制(通常業務の付け替えなど)
- インセンティブや社内表彰制度を用意する
ルールは中核になるスタッフで決めることができますが、環境は経営層や管理職が関わった方が上手くいきます。
共有ファイルにFAQを用意したり、社内掲示板を用意する、チャットツールで共有スレッドを作って困ったことがあったら書き込んでもらうなど、手軽に共有できる環境を作ったり、記事作成にかかる時間を通常業務のフォローで作り出したり、年間で最も読まれた(採用に貢献してくれた)コンテンツを作った人を表彰するといったモチベーションを上げる施策があると浸透しやすいです。
12.当番を決める
すべてのスタッフが担当する場合でも、編集部制でもネタ出しのタイミングは回ってきます。
段取りを組めるように3か月程度が見渡せるカレンダーを作って当番を周知しましょう。
昔ながらの張り紙で周知してもいいですし、GoogleカレンダーかGoogleスプレッドシートなどでスケジュールを共有してもいいでしょう。
締め切りは厳守ですが、事前に提出するのはOKにしておきましょう。
13.効果を測定する
採用コンテンツを経由して採用された数(KGI)、エントリーフォームに訪れた数(CV)、コンテンツの閲覧数や平均閲覧時間が指標(KPI)になります。
優秀なコンテンツが見えてきたら、「なぜこのコンテンツは優秀なのか?」について分析した上で、理由を社内に周知したり、マニュアルに組み込む(標準化)のもいいでしょう。
著者に「どんな気持ちで書いたのか」などをインタビューして、社内報などで周知するのも面白いと思います。
14.定期的に見直しをする
ルールの不備や構成案やマニュアルへの改善点などの意見や、効果を測定した分析結果を元に1ヶ月に1度(優先度が高ければ即時)くらいのタイミングでルールの改変を行いましょう。
最初の内は頻度が高いかもしれませんが、定期的に更新することで常に進歩している実感が得られます。
ルールやマニュアルは、より良いやり方を見つけるための基準みたいなものなので、いいやり方があればそちらを優先すればいいのです。
くれぐれも押しつけにならないように、柔軟な対応をするのが肝要です。
求職者向けのコンテンツを作成して採用に役立てよう
現在のWebサイトにコンテンツを組み込む方法と、採用スペシャルサイトを立ち上げる方法があります。
コンテンツの組み込みは手軽、採用スペシャルサイトは求職者にとって使いやすいサイトになるというメリットがあります。
自社にとってどちらがいいのかについては、更新するかしないかによってコンテンツのつくり方は変わりますし、現在使っているWebサイトにCMSが入っているかによってもおすすめの方法は変わってくるので一概に言えませんが…
Webサイトの規模が大きい場合(ナビゲーションの変更が面倒、作っても気づかれにくい)や、お客さんに持って欲しい印象と求職者に持って欲しい印象が異なる(デザインを変えたい)場合は、採用スペシャルサイトを立ち上げた方がいいかもしれません。
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ヒアリングをした上で更新の有無、現在のサイトに組み込むべきか、新規に立ち上げるべきか。
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