ホームページを経由しない検索体験が増えています。SNSが登場した時よりもさらに大きな影響があると思っています。そんな中、私たちマーケターができる備えについて書いてみました。
まずはホームページを経由しない検索体験を生み出しているゼロクリック検索(ノークリック検索)とAI(ChatGPT)についてご紹介しておきます。
ゼロクリック検索(ノークリック検索)とは?
検索結果ページ(SERP)で表示される情報(スニペット、ナレッジパネル、ローカル検索など)で満足して、リンクをクリックせずに検索を終えることです。
たとえば、「openai」というキーワードで調べるとこういった画面が出てきます。
右側に表示されているのがナレッジパネルと呼ばれる概要。ウィキペディアなどから引用されることが多いです。
ナレッジパネルを見て満足する人も一定数いますが、ゼロクリック検索を助長したのは「他の人はこちらも質問」という機能です。
openAIについては12の質問が表示されています。質問の隣にある矢印をクリックすると、タイトルと説明文が展開されます。
矢印を順番にクリックしていけば、表面的な情報については網羅できます。
さらに、たくさん開いていくと、更に関連する質問候補が出てきます。
説明文は抜粋した90~160字程度表示されていますから、10個開けば1,200字程度の文量になります。
「打ち合わせの中で知らない単語が出たから調べようレベル」だと、検索結果で表示される情報だけでも十分だったりします。
たしかにウェブサイトにアクセスする回数が減ったかも…
ChatGPTとは?
OpenAIが開発したAIツール。質問するとロボットが色々調べて教えてくれます。
企業のサポートセンターのような画面が表示されて、質問するとAIが返答してくれます。
ChatGPTは登録すれば無償で利用できます。似た名前のGPT-3というのは商用モデルなので有料です。
質問への回答は物足りなかったですが、利用者が増えるごとに成長していくと思います。
雑談ができるようになったら、子どもの頃に想像した未来の世界が訪れるのではないでしょうか。
ナイトライダーのような話す車や、AIコンシェルジュ、パートナーとしてのロボットが生まれるかもしれません。
ChatGPTで完結したら、ホームページに訪問する可能性はゼロ
ゼロクリック検索とChatGPTに共通していること
- どちらのテクノロジーもWebサイトに書かれているデータを利用している
- どちらのテクノロジーもWebサイトに貢献しない
- 本テクノロジーの利用者はWebサイトに訪れる可能性がほぼない
「Webサイトを運営する意味とは?」と問いたくなる仕様ですよね。
ホームページ屋としては由々しき事態です。
しかし、これらの動きが加速するのは間違いありません。なぜなら、便利だからです。
世の中の流れに逆らっても仕方ありません。
今後は検索してもホームページに訪れる割合が減るという前提を踏まえて組み立てていきましょう。
検索結果が1位になった時の流入率は20%程度はあったのですが、2021年は13.94%まで落ちました。
マーケターができる備えとは?
私たちマーケターができる備えは、下記の3点だと思います。
- SEOの考え方を変える
- 体験できるコンテンツを提供する
- 個人的な意見を出す
1.SEOの考え方を変える
月間検索回数を大きく意識しないようにする。
月間検索回数はゼロクリック検索やAIが検索する回数も含まれるため、実態に沿わない可能性があります。平均クリック率に惑わされず、実際の流入につながる実数を元に組み立てていきましょう。
また、タイトルや説明文の最適化は継続して行うこと。検索結果に表示されればクリックされる可能性もあります。
2.体験できるコンテンツを提供する
Doクエリ(実行したい)とBuyクエリ(購入したい)を重視する。
ゼロクリック検索やAI検索は、知識を提供するコンテンツ(Knowクエリ)に大きな影響があります。
しかし、読むだけではなく何かが手元に残るようなコンテンツへの影響は軽微と思われます。たとえば、シミュレーションができて結果を共有できたり、ワークショップ形式のコンテンツで成果物ができるようなコンテンツ。これらの体験は検索結果やChatGPTの画面では提供できません。Webサイトに訪れる理由のひとつになるでしょう。
また、ウェブ上に出ていない情報はAI検索の対象外です。最新情報を提供するコンテンツからの流入は今後も確保できると思われます。
つまり、今後も指示されるコンテンツの作成方針は以下のようになります。
- 実際に手を動かすようなコンテンツ
- テキストだけではなく、動画やドキュメントなど複数を組み合わせたコンンテンツ
- 最新情報
「へー」で終わらず、思わず誰かに話したくなるコンテンツを作成していきましょう。
3.個人的な意見を出す
AIの学習が進めば、より高度な受け答えもできるようになるでしょう。定義や一般論などは、より簡単に手に入るようになります。簡単に手に入るものの価値は下がります。ダイヤルアップ時代やiモード時代の通信はとっても貴重でしたが、現代の通信量は湯水のごとく使っても問題ありません。
つまり、定義や一般論を知ってても大した価値はない時代になるということです。
そんな中、重要なのは「共感」です。定義や一般論をどう受け取っているのか、どう考えているのかについてのスタンスを明確に出す。たとえば、コトウリはホームページに関連することならなんでもやりますが、丸投げはお断りしています。なぜなら、成果を出してほしいから。そして、成果を出すにはご自身(インハウス)で活用していただく必要があるからです。
スタンスを明確にしたら定期的に発信、考えに共感してくれるファンを集めましょう。支払う費用が同一ならば、品質の差はそれほどありません。どうせ払うなら、気持ちよく払いたいじゃないですか。
当たり障りのない一般論やどこからか引っ張ってきた定義をコピペしても時間の無駄です。発信しても覚えてもらえないですし、存在意義がないからです。定期的に炎上させてる方もおられますが、あれは話題作りの一環です。生き延びているのは超上級者、素人がマネをすると大けがするのでご注意を…。
ファンをつくるには実績を出していくのが一番です。実績がないなら専門性や生き方(姿勢)を磨くのもいいでしょう。地道に続けていれば、ふとした時に「彼(彼女)の意見はどうなのだろうか?」と思ってもらえるようになります。
まとめ:ユーザーのことだけ考えよう
「キーワードの月間検索回数やライバルの強さを調べて、割に合うかどうかを考える」といった従来の手順はもちろん重要です。
しかし、ボリュームの大きいキーワード(Knowクエリ)のクリック率は今後も低下すると思われます。ゼロクリック検索やAIツールがほとんどのパイを奪ってしまうからです。
こういった検索体験が支持される背景には、ホームページやブログへアクセスした時のBadな検索体験(一般論のみ、薄い情報しか載せてないのに「いかがでしたか?詳しくはウチに問い合わせ!」というテンプレ記事)が影響しているのではないでしょうか。
これからはホームページにわざわざ来てもらえる理由が必要になります。つまり、Webサイトじゃないとできない素晴らしいユーザー体験を提供できれば、安定したアクセスが確保できるということです。
あなたが集めたいユーザー、あるいは既存客のために役立つコンテンツを作りましょう。喜んでもらえれば、必ず支持してくれる方は出てきます。そして、あなたのこだわりが伝わる人と一緒に仕事をやろうではありませんか。