商品コンセプトは、ターゲットが「こういうものがあったらいいのになー」という「ニーズ」と「自社独自の技術やノウハウ」で提供できる「シーズ」をアイデアで結び付けた商品価値、商品コンセプト案は具体化したものです。
【マーケティングの基礎知識】企業環境分析に役立つ概念と分析手法で行った環境分析から商品開発をするフィールドが決まりました。
ここから具体的にどんな新商品を創るべきかを考えていくことになります。
商品コンセプトは「ある商品を概念的に表現したもの」です。
この段階ではいくつもの商品コンセプト案を作り、それらを元に想定ターゲットへのヒアリングを通じて、最終的に成功率の高い1つの商品コンセプト案まで絞り込むことを目指します。
コンセプト案を作るためにはターゲットのニーズを知り、シーズの特性を理解することが肝要です。
ターゲットのニーズ
消費者には顕在化しているニーズと潜在ニーズがあります。
顕在的なニーズは「消費者が言葉にできるもの」で潜在的なニーズは「気がついていないため言葉にできないもの」です。
前者はアンケートやクレームで出てきますが、後者は対話や行動観察によってヒントを得ることになります。
この消費者のニーズを引き出すための探求を「コンシューマーインサイト」(消費者インサイト)と呼びます。
消費者インサイトについては下記記事で紹介してます。
【マーケティングの基礎知識】消費者インサイトとは?活用事例と今すぐできる調査方法
顕在ニーズと潜在ニーズの境界線
何かに困った状況、あるいは抱いている不満が商品によって改善されたとします。
「困っている状況」から「自分が満たされている状況」となりますが、ここから更に「よりよい状況」というものが存在します。
この「自分が満たされている状況」、言い換えれば「一般的な人の多くが満足できるレベル」が顕在ニーズと潜在ニーズの境界線となります。
潜在的なニーズを顕在化させた新商品は大ヒット商品になっています。
据え置き型のステレオから移動中も音楽を楽しみたいといった欲求(音楽が外で楽しめない不満)からウォークマンが生まれ、持ち運びが面倒、カセットやMDを複数持ち歩くのが面倒といった不満からiPodなどが生まれました。
肌着が体に張り付くという不快感を解消するためのサラファイン、冬にモコモコ重ね着しなくてよいためのヒートテックが、熱中症対策のために空調服が生まれました。
メモで書置きするとどこかに吹き飛んでいくし、テープで貼るとベタつくため、ポストイットが生まれました。
これらは「仕方ない」と思っていた事柄を「これを買えばより良い状況にできるよ」という提案型商品です。
次はシーズに対しての理解を深めましょう。
シーズの種類について
シーズは「自社の技術やノウハウ」です。
技術とは、素材、工数の簡略化、アウトソーシングによる効率化などによる「コストダウンに寄与し、競合との価格競争に役立つもの」で、ノウハウとは、新機能、デザイン、ユーザーの利便性が高いなどの「価値を高め、競合と差別化できるもの」です。
ユーザーにとってはコストが安い、または価値が高いといったコスパの良い商品・サービスが手に入ることになります。
自社の技術やノウハウには、競合他社が簡単にマネできないものや競合もマネできるであろうもの2種類があります。
勿論、簡単にマネできない技術やノウハウがあるのが最善ですが、ない場合でもコラボの掛け合わせによっては唯一無二のものになることもあるので、その際はアイデア次第になります。
こういった商品を作るための手順としては3つの考え方があります。
商品コンセプトを作るための手順
商品コンセプトを作るためには、ニーズ・シーズ・アイデアといった3つの要素が必要になります。
それぞれの要素のどれかを起点として考え、残った2つの要素を組み合わせて商品コンセプトを作るため、1.ニーズルート、2.シーズルート、3.アイデアルートと呼びます。
1.ニーズルート
消費者のニーズを起点にして商品コンセプトを組み立てていく手順です。
顕在化しているニーズをどうやってシーズ(自社の独自のノウハウ)によって満たしていくかを考えます。
既存商品の改善やバリエーションが増えることがメインとなるので、ガリガリ君がソーダ味の他にコーラ味、梨味を出していることや、清涼飲料水業界で最近開発されている「クリア」と呼ばれる透明なジュースですね。
クリアタイプへのニーズ・・・一説では、役所などではジュースを飲んでると住民から苦情が入るらしく、ラベルを剥がして水のふりをしながら飲みたいというニーズがあるそうです。
2.シーズルート
企業側の持っているシーズ(自社の独自のノウハウ)を起点にして商品コンセプトを組み立てていく手順です。
独自の技術やノウハウをどのようにすれば消費者のニーズを満たす商品になるかを考えていきます。
3Mのポストイットはこのタイプ。
3Mには、「何度も貼って剥がせる粘着剤」というシーズ(独自のノウハウ)があり、くっつくふせん(アイデア)として、メモなど企業への新しい利用慣習(ニーズ)を提案したタイプです。
3.アイデアルート
先に商品アイデアがある場合や潜在的なニーズを顕在化させる商品アイデアを考え、シーズ(独自のノウハウ)をどのように組み込む手順を考えていきます。
ソニーのウォークマンはこのタイプ。
当時の会長が、「自分の子供が帰宅して最初にすることは、ステレオのスイッチを入れること」という行動を見て音楽と若者の結びつきの深さ(顕在しているニーズ)に目をつけ、外でも楽しめる(潜在的なニーズ=アイデア)ようにするために、持ち運びできる再生専用のステレオを作り(シーズ)大ヒットしたタイプです。
ソニーのウォークマンの例のように潜在的なニーズを探ることでアイデアが生まれることがあります。
この作業をコンシューマーインサイト(消費者心理の洞察)と呼びますが、こちらは下記記事で詳しく紹介しています。