「ブランド」と聞いて、パッと思いつくのはルイ・ヴィトン、シャネル、D&Gなどのファッションブランドを思いつきますが、マーケティングでの「ブランド」とは、単なるネーミングとは異なり、「顧客との約束」と言われています。
顧客との約束
ブランドは、顧客の頭の中にある信頼感や商品に対しての期待そのものです。
そのため、ブランドは顧客が抱いている信頼感や期待感に応える約束をする必要があります。
顧客が抱いている信頼感や期待感
顧客は「具体的な効果や効用」に対して信頼し、「商品が持っている美学やメッセージ」、「商品との接触が始まってから終わるまでの体験」に対して期待感を抱いています。
例えばルイ・ヴィトンのバッグ購入を検討している消費者が期待しているのは、「荷物を入れて心地よく運べる」バッグの機能に対してのみではありません。
所有するまでは、ヴィトンに対しての憧れや、モノグラムなどの独自のデザインに対しての好感、売場での丁寧な接客、所有して街に繰り出すことで得られるステータス感などに対して期待し、使用時においては「かつて金などの貴重品を運ぶために使われたバッグだから丈夫だろう」といった由来から、品質やアフターサービスに対しての信頼感を持っています。
強いブランドとは、こういった「顧客との約束」がしっかりと消費者の頭の中にある「これを買う時はこのブランド」という状態を意味します。
そのため、ブランドの強さとは、つながりの数が多い(人数が多い)×つながりが太い(記憶・印象が強い)といった式で表すことができます。
新商品がいきなりブランドになることはありません。商品、あるいは企業が消費者に対して約束を果たしていくことで、徐々に消費者へイメージが定着していき、ブランドとなっていきます。そのため、ブランド作りとは「どういったイメージを持ってもらいたいか」を逆算して新商品開発などを行う必要があります。
ブランドの階層
ブランドを大別すると、企業ブランドと商品ブランドがあり、6つの階層に分かれています。
個々の商品の違いを分ける名称もあるため、簡単に覚えておきましょう。
また、全ての企業が6つの階層を使用しているわけではありません。
例として取り上げるのは「UNIQLO」(ユニクロ、株式会社ファーストリテイリング)、トヨタ、ソニーなど。
1.グループブランド
複数の企業で構成されているものの、グループ全体で統一されたブランドを使う場合。
大抵は〇〇ホールディングスみたいな持ち株会社が管理してます。
セブンアンドアイグループや銀行系のグループがよく使ってますね。
2.コーポレートブランド
企業そのものがブランドの単位になります。
正式名称と略称がありますが、消費者が持つイメージになるものが企業ブランドになります。
トヨタやソニーはそのままコーポレートブランドになりますが、ファーストリテイリング社の企業ブランドはユニクロになります。
また、消費者は勿論、従業員、提携企業、株主などのステークホルダーにどういったイメージを持ってもらうかを扱う対象になります。
3.事業ブランド
企業がいくつかの事業を展開している時、その事業がブランドの単位となります。
M&Aなどで加わった企業が事業ブランドになる場合もあります。
2018年8月時点のファーストリテイリング社の場合は、UNIQLO、GU、Theory、COMPTOIR DES COTONNIERS、PRINCESSE tam·tam、PLST、J BRANDの7つの事業ブランドを持っているようです。また、トヨタの場合はレクサスが事業ブランドとなります。
4.商品ファミリーブランド
商品群を括る商標が存在して、その商標がブランドの単位となるもの。
いわゆる〇〇シリーズと呼ばれるブランド。
商品個別(単体)で販売スタート、ヒットしたので増産しつつバリエーションを増やしていったことでブランドの一角となり、類似する商品のボス(商品ファミリーブランド)になることが多い。
例としてはソニーのVaio、トヨタのカローラ、ユニクロのヒートテックなど。
5.商品個別ブランド
商品単体=商標という関係なので、新商品開発の最初の単位となります。
実際には「企業ブランド+商品ブランド」と見られることがほとんどです。
大ヒットして増産されると商品ファミリーブランドになったりします。
例としてはトヨタのカローラ・スポーツ、カローラ・フィールダー、ユニクロのヒートテックなど。
6.商品群ブランド(バラエティーネーム・バラエティーフォーム)
同じ商品・サービスのカテゴリー内でバリエーションを増やしたもの。
ユニクロだとフリースやポロシャツの色違い、清涼飲料水だとゼロカロリー、Bossの無糖・微糖・カフェオレ等、トヨタだと同型のセダンとワゴン。
ブランド価値にによるビジネス上のメリット
商品ブランドは「具体的な効果や効用を提供する基本価値」「商品が持っている美学やメッセージが提供する情報価値」「商品との接触が始まってから終わるまでの体験というプロセス価値」といった3つの価値を持っています。
ブランド価値が上がると、より高く購入してもらえる可能性が高くなり、ファンになることで継続して購入(使用)してもらえる可能性も高くなります。
すなわち、「競合比較での優位性獲得」、「リピーターの獲得」といった大きなメリットを産む高い価値を持っています。
ブランドを育てるためには?
商品ブランドが持つ3つの価値は、消費者が商品に対して期待する価値でもあります。
商品力を高め、商品の持つ美学やメッセージをプロモーションによって伝達、手厚いアフターフォローなどを実施、消費者をファンにすることで商品は商品ブランドになり、企業ブランドを高めることになります。
「〇〇と言えば自社の商品(サービス)!」といったイメージを持ってもらえるようにブランドを産み、強いブランドに育てていきたいですね。